後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説1
1.後継者を決めていなかった失敗事例
事例1−1 後継者への引き継ぎが遅れて事業承継に失敗した事例
A社は、創業者がゼロから築き上げた会社でした。創業者一人のときから、現場で叩き上げてきたので、会社のことは何でも自分で決めなければ気が済みません。その結果、息子を後継者として専務にしていたのですが、実質的には後継者というよりも、いち従業員に過ぎませんでした。
創業者が超ワンマン経営者として長く君臨していたために、従業員もイエスマンばかりで、優秀な人材は社長と衝突して、会社を去っていきました。高齢にもかかわらず陣頭指揮を取り続けていた無理がた たり、創業者が病に倒れました。資金繰りも何も知らされていない息子がいきなり社長になったのですが・・・・・・。
事例1−2 遺言を残さまないまま社長が死亡し事業承継に失敗した事例
B社の社長には、3人の子供がいました。長女と次女そして長男です。長女と次女は結婚しており、遠方に住んでいました。男の子は1人なので、早くから長男を後継者と決めていて、自分のそばに置いて、後継者教育をほどこしてきました。
子供の頃は、長男が末っ子ということもあり、妻が若くして亡くなったこともあって、2人の姉妹は長男をとても可愛がっていました。何も問題がないと安心していたのですが、社長が突然、遺言書も残さないまま交通事故で亡くなくなってしまったのです。
予定通り、長男が社長になろうとしたところ、それまで会社とは関わりのなかった長女の夫が、突然、社長に名乗りをあげました。どうやら密かに次女とも連絡を取り合っていたようで、長男は法定相続分では、株式数が過半数に達しません。結局、財産目当ての長女の夫に会社は売却されてしまいました・・・・・。
事例1−3 社長が若くして急逝し事業承継に失敗した事例
C社は、工務店であり、手広く仕事を行っていました。顧客数も多く一回仕事をした先からの紹介が多くて、繁盛していました。社長はまだ45歳であり、働き盛りなので、事業承継などはまだまだ先の話だと思っていました。そのために、事業承継対策は何もしていませんでした。誰しも何も問題がないと思っていたのですが、ある日突然、交通事故に合って、社長が亡くなってしまったのです。
社長夫人は専業主婦であり、経営にはまったくタッチしていませんでした。子供はいましたが、まだ18歳の長男と15歳の長女であり、経営を継ぐ年齢には達していません。社長の兄弟などの親族も会社には関係していなかったので、文字通り、後継者が不在の状態となりました。まだ18歳とはいえ、息子がいたために、従業員の中にも後継者として育成していた人材はいません。
社長が若くして急逝した場合に発生する問題は?
- 後継者は息子と考えていたとしても、まだ年齢が若過ぎて社長に就任するのは無理である
- ワンマン社長であり、従業員を経営に参画させていなかったので、社長がいないと何も決められない
- 会社の業績は良好で取引先からも支持されていたために、会社が存続することを周囲が望んだ
- 社長は若くて健康であったとしても、いつ何があるかわからないので対策を練っておく必要がある
- 社長になった以上は、毎年遺書を書き改めるのが義務であり、残された人が困らないようにしておく・・・etc.
社長に万が一のことがあっても大丈夫なポイントは?
社長に万が一のことがあった場合に、誰に社長を継いでもらいたいのか、あるいは企業を売却して、M&Aで実質を残すのであれば、その役割を誰に委託するのかなど、いろいろなケースを想定して、その時々で最善の方法を、遺書として書き記しておくことが必要です。どうしても息子に継がせたいのであれば、その間の後見人を指名して、依頼しておかなければなりません。これには、遺産分割の問題もからむので、余程よい案を練っておかなければ、会社を存続できなくなる恐れがあります。