後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説8

後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説8

外部から招聘した人物を後継者にして事業承継に失敗した事例

事例8−1 後継者に裏切られ事業承継に失敗した事例

Q社の経営者は、子供がいなかったのですが、従業員や取引先のことを考えて、何とか後継者を見つけて、会社を存続させたいと考えていました。知人に大手企業で管理職を務めていた人がいたので、この人を後継者にしたいと思いました。

自らは営業一筋で、規模拡大に邁進していたので、常日頃から会社の体制を固める必要性を感じていました。そのため、後継者候補が経理に詳しい人材であるということが、後継者に据える決め手となったのです。

会社を継がせるつもりで入社してもらったので、会社の管理面はすべてまかせて、自らは相変わらず取引先の所を飛び回っていました。いざ、社長を交代してから、しばらくしてから金融機関に財務面の問題を指摘されました。調査したところ、後継者の不正経理が発覚したのです。信用していただけに大きなショックをうけたことは言うまでもありません・・・・・。

事例8−2 後継者と親族が争って事業承継に失敗した事例

R社の経営者は、子供がいないために、後継者を誰にしたらよいか悩んでいました。自分がワンマン経営をしてきたこともあり、従業員の中には経営を託すほどの人材が育っていないと思いました。

そんなとき、取引先に勤務して、いつも新たな提案をしてくる社員がとても優秀なので、思い切って声をかけてみました。聞いてみると、その社員が勤めている会社には後継者となる息子がいて、社長となる道はなく、ぜひ後継者として立候補したいとの感触を得ました。早速、自社に入社させ後継者としての教育を受けさせました。思った通り、優秀で安心して会社をまかせることにしました。ところが、先代が亡くなった後に株を引き継いだ未亡人が、突然、私が社長をやると言って、後継社長に退陣を迫ったのです。その結果、両者を応援する金融機関を巻き込んで、激しい争いになりました・・・・・。

事例8−3 矢継ぎ早の改革に従業員がついていけず事業承継に失敗した事例

S社の経営者は、自分が引退した後も、自らが創り上げた企業を何とか大きくしたいと考えていました。できるものならグローバル基準を取り入れて、国際的な企業にしたいという夢を持っていたのです。

そのため、早くから持ち株会を立ち上げて、従業員にも経営意識を持たせるように務めてきました。後継者の選定に当たっては、迷うことなくヘッドハンティング会社に依頼して、外資で働いた経験のある優秀な人材を据えることにしたのです。

後継者は確かに優秀で、新たな改革を矢継ぎ早に打ち出しました。人事制度に関しても、年功序列などを一切無視して、実力主義オンリーに改善しました。これをきっかけとして、幹部社員の猛反発が始まりました。

後継者を取るか、自分たちを取るかと迫られた先代社長は、最終的には、優秀な後継者に辞めてもらわざるをえなくなりました。自らが社長に復帰したのですが、この先どうしたらよいか不安でたまりません・・・・・。

外部から招聘した後継者が失敗した原因は何か?
  • 先代経営者の会社を大きくしたい、国際的な企業にしたいという夢が社内で十分に共有されていなかった
  • 後継者は社内全体から広く選定したわけではなく、社長の一存のみで、外部の人物が選ばれた
  • 後継者が、グローバル基準や合理性のみを追求してしまい、企業の文化や従業員の心情に配慮しなかった
  • 従業員は、後継者が外部から来た人物であることに加えて、人事制度などについて一方的な改革が行われたことで大きな不満を持った
  • 後継者と従業員の対立に直面した先代経営者の対応は、中途半端なものであった・・・etc.
外部から招聘した後継者に事業承継させるポイントは?

外部から招聘した人材が後継者として成功するためには、様々なハードルがあります。特に、生え抜きの従業員にとっては、外部の人材がいきなり自分たちの上に立つことになるので、感情的な反発は避けられません。この事例のように、企業の改革も合わせて行うことになると、その難易度はさらに高まるといえるでしょう。

外部から招聘した後継者に事業承継させるには、先代経営者が後継者を全面的に支持するとともに、従業員に対しても、なぜその後継者を選んだのかを丁寧に説明することが不可欠です。特に、企業制度の改革については、先代経営者自らが従業員の説得に当たったり、あくまでも反対する従業員は自身とともに引退させるなどの対応が必要です。また、後継者も、実力を示すだけでなく、企業の文化を尊重したり、生え抜きの従業員とも頻繁なコミュニケーションを取るなどの努力が必要です。

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