後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説2

後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説2

2.子どもを後継者にして事業承継に失敗した事例(1)

事例2−1 後継者を信用できずに事業承継に失敗した事例

D社は、食品スーパーチェーンです。堅実な経営により、地元では顧客の支持を得ていて、店舗数も増えて、順調に繁盛しています。経営者は2代目なのですが、とてもやり手の経営者で、現在の繁盛の基盤を築いた人物です。年齢は78歳になりますが、いまだに店舗を回っては、現場の店長に檄を飛ばす毎日が続いています。

この経営者には、53歳の息子がいます。会社では専務の肩書きを持ち、経営に参加しています。社長は、周囲に対して、息子は経営者としてまだ一人前ではないので、いつまでたっても心配で社長の座を譲ることはできない。どうしたらよいだろうかと、嘆いている状態が続いています。

なぜ息子を信じて、社長の座を譲らないのだろうか?
  • 実際には息子は経営者としての能力があり、いつでも承継できる準備ができている
  • 周囲の人も息子の能力を認めており、現社長以外の人は、社長にならないのを不思議に思っている
  • 現社長は息子に対して過大な期待を持っており、ハードルが高くていつまでも超えることができない
  • 現社長は息子に対して過少な評価をしており、周囲の評価とは明らかに評価がずれている◆現社長は現場の細かいことまで自分で指示しないと不満で人にまかせることが苦手である・・・etc.
後継者を公平に評価して譲渡するポイントは?

現社長がカリスマ社長であればあるほど、いつまでも社長を続けてしまい、後継者にバトンタッチするタイミングが遅れる傾向があります。これを防ぐためには、早くから事業承継の計画を立てて、バトンタッチする時期を明確に決めることです。

そして、その時に社長としてクリアすべき基準を明確に決めて、後継者にもその内容を伝えて共有化することです。さらに、必ずしも自分と同じ経営スタイルではなくても会社は運営していけることを理解して、後継者に少しずつ仕事を任せて、段階的に引き継いでいくようにするとよいでしょう。

事例2−2 後継者に口を挟んで事業承継に失敗した事例

E社は、中堅の卸会社です。早くから事業承継の計画を立てており、社長が65歳になるのを機に、45歳になる息子に社長の座を譲りました。社長を譲るに当たって、自らは代表権のない会長に就任して、会社のことはすべてまかせるから、思う通りに経営するように後継者に伝えました。後継者は、責任を感じて、張り切って経営に邁進しようとしたのですが・・・。

実際には、先代経営者が経営に口を挟まなかったのは、最初の1ヵ月だけで、2ヵ月目からは、ことあるごとに意見を言うようになりました。後継者が文句を言うと、最初のうちこそ謝っていましたが、次第に、後継者がしっかりしないから口を出さずにいられないと開き直るようになり、しまいには仲たがいして、会社の内部がバラバラになり、社員も右往左往するようになってしまいました。

なぜ先代社長は、後継者に対していつまでも口を挟むのだろうか?
  • いつまで経っても後継者の能力を低くみており、自分の方が経営者として実力があると思っている
  • 会社に対しての思い入れが強くて、後継者のやり方では、会社が上手くいかないと思い込んでいる
  • 会長としての役割がよくわからなくて、自分の役割に徹することができない
  • 後継者も会長を立てることをせずに、経営から完全に排除しようとしている
  • 会長も後継者も良かれとおもってやっているのだが、社員に対する悪影響を考えていない・・・etc.
後継者を公平に評価して譲渡するポイントは?

先代社長も、後継者に社長の座を譲渡する段階では、経営に口を挟まずに、完全にまかせようと思っていたはずなのですが、結局は我慢することができないということはよく見受けられます。この最大の原因は、会長と社長の役割を明確にルール化していないからです。

この事例では会長の役割が何もなく、口を挟むか何もしないか、どちらかになってしまう状況でした。会長は、業界団体の役職を引き受けて、外部との調整やイメージアップに専念して、社内のことは社長が行うなどのルール化をする必要があります。また、会長の社内での役割は、企業の沿革や理念を話すことのみに専念するなどと決めるのもよいと思います。

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