後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説7

後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説7

従業員を後継者にして事業承継に失敗した事例

事例7−1 後継者の選定を誤って事業承継に失敗した事例

N社では、親族に適切な後継者候補がいなかったために、従業員の中から後継者を選定することにしました。社長は自分の考えをよく理解しており、自分の意志を継いでくれることを条件に人選をしました。その結果、社長の腹心の部下だった常務を後継者として社長の椅子を譲りました。

ところが、いざ後継者が社長になってみると、それまで何でも先代の意のままに動いていたので、指示されるとこなす能力は高いのですが、いざ自分で主体的に動くとなると、決断が遅く、一度決めたことを撤回することも多いありさまです。従業員からは不安の声があがり、結局、先代が社長に復帰して、後継者の選定をもう一度やりなおすことになりました・・・・・・。

事例7−2 ライバルの従業員同士が争って事業承継に失敗した事例

O社では、社長は会社は社会的な使命を果たす機関であるとの考えを持ち、中小企業であるにもかかわらず、親族は一切、会社内に入れずに経営を続けてきました。そのために、社内には優秀な人材が育っていました。後継者を決めるに当たっても、実力主義で決めさせようとして、最終候補に残った従業員2人を同時期に、同格の専務として競わせることにしました。ところが、これが裏目に出たのです。

次期社長を狙う2人の専務は、お互いの派閥を強化して、ことごとく対立する事態を招きました。社長はこの事態を憂慮して、次期社長をどちらにするか公言しました。すると、対立するもう1人の専務は、報復人事を恐れた自らの派閥の部下を引き連れて、独立してしまったのです。結局、会社は半分の規模となり、自社を敵対視する強力なライバル会社を誕生させることになってしまいました・・・・・。

事例7−3 従業員を後継者に育てられず事業承継に失敗した事例

P社は、中堅の運送会社です。社長が78歳になっているにもかかわらず、未だに後継者が決まっていません。これまで放置しているわけではなくて、これまで20年以上も、一生懸命に後継者を育成しようとしていたにもかかわらず、結果的に誰も後継者がいないのです。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

現社長には子供がいないので、従業員から後継者を選ぶつもりでした。それゆえ、優秀な従業員に、早いタイミングで後継者に選定したい旨を告げて、一気に役職を高めるようにしました。ところが、そうしたところ、後継者に指名されなかった優秀な社員が辞めてしまいました。そして、後継者に指名した社員は優遇されたことで我儘となり、結局、社長と対立して辞めてしまいました。こんなことを何回も繰り返してきたのです。

従業員を後継者に育てられない原因は何か?
  • 後継者の選定基準が明確ではなくて、選ばれた人と選ばれなかった人の違いが不明確である
  • 後継者は社内全体から広く選定したわけではなく、社長の身近に、たまたまいた人から選ばれた
  • 後継者に選ばれた人は、たまたまであったにもかかわらず自分の能力がずば抜けて高いと過信した
  • 後継者に選ばれなかった人は、自分のほうが優秀なのに、選ばれなかったので大きな不満を持った
  • 社長は後継者をどういう基準で選ぶのか、またどのような方法で選ぶのか一切説明しなかった・・・etc.
従業員を後継者に育てるポイントは?

従業員から後継者を選ぶのはとても難しい課題です。特に、優秀な従業員が複数いる場合には、1人を選ぶと、それ以外の人が会社を去っていくことを覚悟しなければなりません。それを防ぐためには、外部から優秀な人材をスカウトしてくるか、独立制度のようなものを作って、グループ会社として独立させるなどの方法を考えます。

このような前提でも、従業員から選ぶのであれば、後継者の要件を明確に提示して、誰をどのような理由で選んだのか示すことが必要です。また、後継者に指名された人にも、過信することなく謙虚に徹するように説得します。後継者を全員で支えるような環境づくりをすることが何よりも重要です。

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