後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説3

後継者・事業承継の失敗事例を簡単にわかりやすく解説3

子どもを後継者にして事業承継に失敗した事例(2)

事例3−1 後継者に見限られて事業承継に失敗した事例

F社は飲食店を15店舗チェーン展開している企業です。父親が創業した会社で、小さな店を始めたときから、夫婦が力を合わせて一生懸命に働いて、創業店を超繁盛店にして、2店、3店と店数を増やしてきました。創業経営者が還暦を迎えたために、事業承継の計画を立てて、息子に承継しようとしたときです。

息子は一人で30歳になります。一流大学を卒業して、大手の食品会社に勤務しています。食品会社を選んだのも、いずれは会社を承継してくれるから、少しでも関連のある企業に就職したのだと思っていました。ところが、いざ父親が自分の会社に戻ってこないかと打診したところ、父親にとっては意外な答えが返ってきました。息子は「自分は絶対に父親の仕事だけは継ぎたくない。今の仕事を続けるつもりだ」と言うのです。

なぜ息子は父親の企業を見限ったのか?
  • 幼い頃から両親が働き詰めで、面倒を見てもらえなかった
  • 自分の子どもには寂しい思いをさせたくない
  • 仕事だけの人生にせず、自分の時間を大切にしたい
  • 愚痴や文句だけを言い続ける生活をしたくない◆今の仕事にやりがいがあるので、続けていきたい・・・etc.
後継者に見限られないためのポイントは?

自分の会社を後継者に継いでもらいたいと思ったら、息子が小さい時から、仕事の愚痴や苦労話を家の中ですることは、できる限り避けることが必要です。子供は親が考えている以上に、親の言葉から強い影響を受けるからです。

そして、早い時期から子供に会社を継いでもらいたいということを明確に告げて、夢を共有するような関係を築いておくことです。そのためには、経営者が将来ビジョンを語り、息子に対して、「自分だったらどうしたいか」という言葉を投げかけて、意見を求める習慣をつけることです。

事例3−2 後継者に自信がなく事業承継に失敗した事例

G社は、ある製造メーカーです。中小企業ですが、経営は安定しており、業績も順調に推移しております。息子は大学3年生で、就職活動を始める時期になっています。両親は、将来は息子に会社を承継してもらいたいと考えていますが、どうも息子の様子を見ていると、会社を承継する意欲に欠けるような気がします。

この息子は、両親が厳しく躾けたこともあり、友人も多くて優しい性格に育っています。しかし、いつも控えめで、自分から前に出ることはなく、頼りない面もあります。そんな性格のために、父親が会社の話をして、相談を持ちかけても、話題を避けて応じてこようとしません。どうやら、本人は自分は組織の上に立って人を引っ張っていくタイプではなく、経営者には向いていないと考えているようです。父親は何とか会社を承継してもらいたいのですが。

なぜ息子は父親の会社を継ぐ自信がないのだろうか?
  • 会社の社会的な役割や意義について正しい認識がない
  • 経営者の仕事ややりがいについて正しい認識がない
  • 経営者のタイプには様々あり、父親だけが経営者の姿ではないことを理解していない
  • 自分の長所を生かせば十分に経営が可能であることに気づいていない
  • 父親の築いた信用があることのメリットを認識していない・・・etc.
後継者に自信を持たせるポイントは?

後継者に厳しい躾けをしたことは、必ずしも誤りとはいえないと思います。それにより、周囲から好かれて応援してもらえる性格に育ったことは、経営者としても、大きなメリットです。後継者教育として欠けていたことは、経営者像について、正しく伝えてこなかったことです。

経営者のスタイルに絶対というものはなく、それぞれが自分の強みを生かして、周囲を巻き込みながら運営していくものだということをきちんと教える必要があります。また、会社を継続していくことはいかに社会的な意義のある仕事なのかということも伝えなければなりません。そして、経営者は後継者として会社を継いで欲しいということを曖昧に言うのではなく、はっきりと伝えることです。

事例3−3 後継者が暴走して事業承継に失敗した事例

H社は、リース業を営んでいる会社です。先代社長は、自分も早くから独立して事業を起こした経験もあり、後継者にもできるだけ若いうちに社長になって、創業のつもりで頑張ってもらいたいと考えていました。後継者は、大手の製造メーカーで2年ほど勤務した後、自分の会社に戻って、1年ほどで経営者になりました。

後継者は、事業を継承してすぐから、先代のやり方を強く批判するようになりました。社内で新しい試みをするのならまだよかったのですが、社外の金融機関や取引先に対して、公然と先代のやり方を批判して、大ボラを吹いています。先代経営者と付き合いのある社外の人達からは、お宅の後継者は大丈夫なのかという、不安の問合せが増えている状況です。先代経営者は、会社の行く末を案じています。

なぜ後継者超は暴走してしまったのだろうか?
  • 自分の存在をアピールしたいので、先代のやり方をすべて否定して、違いを出そうとしている
  • 大手メーカーと中小企業の違いを理解しないままに、すぐに大手並みの仕組みにしようとあせっている
  • 後継者は、先代社長が苦労して築いた人脈の上に、事業が成り立っていることを理解していない
  • 具体的な損益計画を詰めないままに、ブームになっている新たな商品を場当たり的に取り扱っている
  • 後継者は自分の言動や行動が会社の信用低下につながっていることを理解していない・・・etc.
後継者の暴走を防ぐためのポイントは?

後継者が意欲を持っているのは良いのですが、事業承継後にいきなり何もかも変えようとすると、孤立して失敗します。先代経営者が事業を営んでおり、事業承継するまでに育てた過程には、それだけの理由があるのです。

このケースでは、事業承継するのが早過ぎたと思います。まず、専務等の役職に就けて、仕事の進め方や責任感を見極めてから社長に就けるべきでした。代表権を与えるのは、自らの言動や行動が会社に与える影響を認識してふるまえるようになってからでも遅くはありません。

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