事業承継とは?Q&A形式で簡単にわかりやすく解説9

事業承継とは?Q&A形式でわかりやすく解説9 経営承継円滑化法

Q49.事業承継で使われる経営承継円滑化法とは何ですか?

経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を円滑に進めることを目的とする法律で、以下の4つの制度を定めています。

1.遺留分に関する民法の特例

後継者が先代経営者から贈与・相続を受けた株式について、遺留分を算定するための財産の価額から除外(除外合意)したり、遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)したりできるという制度です。これにより、遺留分による株式の分散や、後継者の努力により株式価値の増加により遺留分が増加することを防止できます。

2.金融支援

経営者の死亡等に伴い必要な資金の調達を支援するため、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠で貸付けを受けることができる制度です。

3.事業承継税制

後継者が、先代経営者から贈与・相続を受けた株式等について、贈与税・相続税の納税が免除・猶予される制度です。事業承継税制には、一般措置と、平成30年度改正で導入された特例措置があり、要件や効果が異なります。

4.所在不明株主に関する会社法の特例

会社法上、株式会社は、所在不明株主に対して行う通知等が5年以上継続して到達せず、その所在不明株主が継続して 5 年間剰余金の配当を受領しない場合、その保有株式の競売又は売却(自社による買取りを含む)の手続が可能ですが、この5年を1年に短縮する特例です。

Q50.事業承継で経営承継円滑化法を利用する要件は?

経営承継円滑化法の各制度を利用するためには、それぞれの要件を満たす必要があります。

1.遺留分に関する民法の特例

除外合意や固定合意が行われた場合には、合意から1ヶ月以内に、経済産業大臣の確認を申請します。経済産業大臣の確認を受けたら、さらに確認後1ヶ月以内に、家庭裁判所の許可を申し立てます。これらの手続は、いずれも後継者が単独で行うことができます。

2.金融支援

都道府県知事に認定を受ける必要があります。認定の要件は、必要となる資金の類型によって異なっています。また、都道府県知事の認定とは別に金融機関や信用保証協会による審査を受ける必要があります。

3.事業承継税制

先代経営者と後継者が議決権を有する株式の保有割合などの一定の要件を満たした上で、都道府県知事に認定を受ける必要があります。都道府県知事に認定を受けたら、税務署に贈与税・相続税の申告を行います。その後も、認定有効期間中の都道府県知事への年次報告書や税務署への継続届出書の提出等の義務が課されます。

4.所在不明株主に関する会社法の特例

経営者が継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため、会社の事業活動の継続に支障が生じていること、②一部株主の所在が不明であることにより、その経営を後継者に円滑に承継させることが困難であることの2つ要件を満たし、都道府県知事に認定を受ける必要があります。

Q51.経営承継円滑化法を事業承継で使う注意点は?

1.遺留分に関する民法の特例

自社株式について相続時の遺留分の計算から除外・金額を時価に固定できたとしても、後継者以外の相続人の遺留分自体がなくなるわけではなく、相続や相続税への対策が必要となることに注意が必要です。

2.金融支援

信用保証協会の融資特別枠を利用可能ですが、融資をするかしないかの判断は金融機関や信用保証協会による審査によりますし、あくまで経営の円滑承継のための資金で、運転資金の融資ではないことに注意が必要です。

3.事業承継税制

認定後も納税猶予要件を引き続き満たす必要があり、都道府県知事への報告書や税務署への届出書の提出が義務付けられるなど、負担が大きい点に注意が必要です。

4.所在不明株主に関する会社法の特例

所在不明株主の保有株式の競売又は売却について、手続が可能となるまでの期間を短縮する特例ですが、競売又は売却の手続自体が不要となるわけではなく、会社法の規定に従って裁判所で手続を行わなければならないことに注意が必要です

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