事業承継とは?Q&A形式でわかりやすく解説8 遺言・相続
Q44.事業承継の株式相続の注意点を教えて下さい。
事業承継において、オーナー経営者が何も準備しないまま亡くなってしまい、法定相続分による相続が発生してしまうと、株式が分散してしまったり、相続紛争に発展してしまう恐れがあります。そのため、オーナー経営者は、できる限り健康な間に、後継者に株式を集中させるためのへ株式譲渡などを終えておくことが望ましいです。また、突然万が一の事態に陥ることも考えて、遺言を作成しておく必要があります。
Q45.事業承継と遺言はどんな関係があるのですか?
遺言とは財産分割について法律の手続きに則って正式に意思表明したものです。経営者は、相続紛争を予防し、円滑な事業承継を行うために、このような遺言を残しておく必要があります。遺言というと、死ぬ間際に書くようなイメージを持っている人がいるかもしれませんが、経営者たるもの毎年1回、新たな遺言を作成するくらいの周到な準備をするべきです。
Q46.事業承継の遺言における注意点は?
配偶者や子どもなどの一定の相続人には、遺言によっても奪うことができない最低限の相続分があり、これを遺留分といいます。そのため、事業承継で最も難しいのは、後継者に株式を集中させるために株式譲渡した場合に、後継者と後継者以外の親族との相続分のバランスをどのようにして取るかです。適切にバランスを取るためには、株式以外にも多くの財産を残すことがポイントとなります。したがって、経営者は早くから長期にわたって、後継者以外の親族に分け与えるべき財産を築いておくことが求められます。そして、分割しやすいように、現金預金の比率を高めておくことも必要です。
Q47.事業承継で遺言がないと、どうなるのですか?
遺言書がない場合は、相続人または代理人により、遺産分割協議という協議により、話し合いで遺産分割を決めることになります。もし、相続が発生しまった場合には、後継者は自社株を少しでも多く自分に相続させてもらうように全力を尽くして遺産分割協議に臨みます。そのためには、株式以外の財産はあきらめるという覚悟が必要です。株式に匹敵するだけの現預金等があればよいのですが、ない場合は他の親族も簡単には譲らないでしょう。この場合には、後継者が融資を受けて現金を支払うか、分割払いにしてもらうなど、会社の存続に理解を求めた上で、他の相続人の説得に努めます。
Q48.事業承継で遺産分割協議がまとまらないと、どうなるのですか?
もし遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことになります。もし調停もまとまらない時は、家庭裁判所が遺産分割審判で相続分を指定することになります。これらの手続には長期間を要するとともに、法定相続分に基づき、原則として兄弟は均等に相続財産を分割するので、株式をすべて後継者が得ることは難しくなります。つまり、事業承継に失敗する可能性が大きいということです。