事業承継とは?Q&A形式でわかりやすく解説13 株式譲渡の方法と税金
Q72.事業承継の前に財産を譲っておけますか?
遺産の相続争いを避けるために、経営者が元気なうちに後継者に株式集中させるように財産を分割しておきたいと考える場合はどうでしょうか。この場合は、後継者に対して株式売却するか生前贈与することになります。ここで注意すべきは、この場合の株式の評価は、簿価ではなく、法律で定められた計算方法による価格となる点です。一般に株式売却すると、経営者に譲渡益が発生して税金が課金されます。生前贈与すると、後継者に贈与税が課金されます。贈与税の税率は他の方法よりも割高になるので、要注意です。
Q73.事業承継で株式譲渡はどんな方法がよいですか?
後継者に株式を譲渡する方法には、売却、贈与、相続の3つの方法があります。この中で、相続は予測不能なので、事業承継の方法としては適切ではありません。オーナー経営者が健康な間に計画的に株式譲渡を進めるためには、売却か贈与の方法を考えることになります。売却では現経営者に税金が課金されますし、後継者に多額な資金が必要となります。贈与では後継者に資金は必要ありませんが、株価が高いと、高額な贈与税が課金されます。諸条件をよく考えて適切な方法を選択する必要があります。
Q74.事業承継で株式売却の注意点を教えて下さい。
まず株式売却は時価で行われるということを念頭に置いて下さい。上場企業ですと市場価格が決まっていますから問題ないのですが、未上場企業ですと、時価の決め方が大変難しい問題となります。同族株主からその子へ売却する場合には、相続税評価額と同じ方法が適用されます。それよりも低い価格で売却すると、差額に贈与税がかかります。ただし、別の法人に売却すると、同じ時価でも相続税評価額は適用されないので、選択肢が広がります。また、同族株主間以外の個人の取引であれば、配当還元法による評価額以上の価額で売却することになるでしょう。
Q75.事業承継で株式売却の税金はどうなりますか?
一般に株式などの有価証券を売却した場合は、売却によって得た売却益に対して所得税が課金されます。ここでいう売却益は、下記の計算式で算出します。
株式譲渡益=売却価額-(取得費+売却にかかる手数料)そして、税金として、所得税と住民税が賦課されますので、確定申告により、納付することになります。
Q76.事業承継で株式贈与の注意点を教えて下さい。
事業承継において、株式贈与は株式売却に比べて税務上の規定が明確である分だけ、リスクが低いということができます。株式贈与を行うときの注意点は、いつ、誰が、誰に、何を、いくら贈与したのかという贈与証書を書面で残しておくことが大切です。また、贈与を受ける側は、贈与税の申告書を証拠として保管しておきます。贈与そのものは、意思表示だけで認められるのですが、後からのトラブル防止の対策が必要ということです。
Q77.事業承継で株式贈与の税金はどうなりますか?
一般に贈与税は、他の税金に比較すると、税率が割高に設定されています。したがって、税率だけを比べると、贈与税のほうが相続税よりも割高になります。しかし、計画的に株式譲渡するという観点からは、相続ではリスクが大きいので、贈与税を選択することになります。
株式譲渡に当たって、贈与税の計算方法には、一般の贈与と相続時期清算課税制度による贈与の2通りあります。ここで相続時清算課税制度による贈与とは、贈与した財産は贈与された人のものになるという点では一般の贈与と変わらないのですが、その財産については相続税課税対象となるという違いがあります。相続時清算課税制度は、子や孫への贈与のみに適用されることをはじめとして、諸条件があります。具体的な税金の計算方法については、専門家にご相談下さい。
Q78.事業承継で株式贈与を少しでも有利にするには?
贈与税の税率は高いので、株式贈与をする場合には、少しでも節税できるように贈与を進める必要があります。そこで念頭に置いておくべきことは、2点です。1つは株式の評価額があまりにも高い場合には、贈与は見合わせるほうが無難です。もう1つは、相続が発生するまでの期間です。相続発生時から過去3年以内に行われた贈与は、相続財産と見なすように定められていますから、この間に贈与を行っても意味がないことになります。
株式贈与を行うためには、できるだけ早いタイミングから連続贈与をすると税務面で有利になります。基礎控除額(年間110万円)までなら無税で贈与できるので、早期から少しずつ贈与を進めていきます。ただし、事業承継では、後継者に経営権を渡すタイミングと株式譲渡のタイミングは、微妙な問題なので、専門家に相談した上で、全体の構想をよく練ってから実施することが重要です。
Q79.事業承継で株式相続の税金はどうなりますか?
株式も相続財産となりますので、原則は通常の財産として課税されます。相続税の計算方法は、3つのステップに分かれます。第1ステップは被相続人の相続財産を計算します。第2ステップは相続税の総額を計算します。第3ステップは相続人ごとの相続税の額を計算します。したがって、株式の評価額だけでは相続税は計算できないということになります。後継者が株式のみを相続して、他の財産をすべて他の相続人に譲った場合、相続税を支払う資金をどうするか考慮しておくことが必要です。