事業承継とは?Q&A形式で簡単にわかりやすく解説7

事業承継とは?Q&A形式でわかりやすく解説7 事業承継と株式

Q33.事業承継で株式はいつ譲渡したらよいですか?

後継者が子どもなどの親族の場合は、株式はできるだけ早い時期から段階的に譲渡することが望ましいと考えます。会社の株主としての自覚を持たせると共に、配当金などの見返りも与えることができるからです。ただし、従業員など親族以外の後継者を考えている場合は、株式譲渡に関しては慎重に取り扱う必要があります。実際に後継者として社長の地位に就かせてから譲渡するのがよいでしょう。また、その場合は株式譲渡制限会社として、保有株式を売却するには、株主総会や取締役会の承認が必要という定款を作成しておくことが重要です。

Q34.事業承継で株式はどの位譲渡したらよいですか?

特に親族の後継者に対しては、株式は段階的に譲渡していきますが、最終的にはどの位の株式を譲渡したらよいでしょうか。一般に株主総会の普通決議を成立させるのに必要な議決権の過半数の株式が最低条件です。ただし、これだけでは定款変更、募集株式の発行、組織再編などに必要とされる特別決議を成立させることはできません。特別決議を成立させるためには、議決権の3分の2以上の株式を保有する必要があります。したがって、後継者に対しては3分の2以上の構成比となるだけの株式を譲渡することが必要です。理想的には、オーナー企業では、後継者に100%の株式を持たせるようにすべきです。

Q35.事業承継で使われる種類株式とは何ですか?

種類株式とは、普通株式とは種類の異なる株式のことです。具体的には、配当優先株式、議決権制限株式、譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式、拒否権付株式などの様々な株式があります。事業承継で重要となるのは、1つは譲渡制限株式です。そして、もう1つは議決権制限株式です。後継者に普通株式を保有させ、他の親族に議決権制限株式を保有させるという方法があります。この場合、議決権制限株式には配当優先株をセットで発行するのが一般的です。ただし、議決権制限株でも、後から問題になる場合がありますから、理想的には、後継者に100%株式を保有させるべきであることには変わりありません。

Q36.事業承継で使われる自己株式とは何ですか?

自己株式とは、会社自体が持っている自社の株式のことを意味します。会社の金庫に保管されるというイメージを描くことから、別名は金庫株とも呼ばれます。貸借対照表では、純資産の部のマイナスとして取り扱われます。以前の法律では、自己株式は株式消却のために活用することのみ認められていましたが、現在は制限が取り払われましたので、制度としては、会社が自己株式をいつまで持っていてもよいことになっています。限度額も債務超過にならなければよいので、留保利益の分まで持つことも可能です。

Q37.事業承継で自己株式を活用するには?

事業承継で最も重要なことは、後継者に株式を集中させることです。オーナー経営者が所有している株式を会社に売却して、自己株式とすると、オーナーは株式を現金に換えることが可能になります。これにより、後継者には株式を譲渡して、他の相続人には現金を譲渡するということが可能になります。しかも、自己株式には議決権がないので、後継者が保有していなくても決議に影響を与えないというメリットがあります。株式が現金化することにより、相続税の納税資金として、節税のための不動産取得のため、節税のための生命保険加入のためなど、相続税対策の方法が幅広くなります。もちろん、自己株式を売却する価格は時価となります。なお、売却の際は、所得税と住民税が課税されます。

Q38.事業承継で持ち株会社を活用するには?

持ち株会社というのは、新たに法人を作って、そこに元の会社の株式を移転して、元の会社の株主は新たな会社の株式を受け取るという制度です。持ち株会社への移行は、元の会社の株主総会で特別決議があれば実施できます。持ち株会社の活用は、現在の自社の株価を直接下げるわけではなく、将来の株価値上がりに対する対策と考えられます。なお、完全支配関係にある親子会社間の株式交換や株式移転で、株式以外の資産を交付しないなどの適格要件を満たす場合には課税されないという課税繰り延べ制度が定められています。

Q39.事業承継で問題となる名義株式とは何ですか?

名義株式とは、株主名簿に記載されている人と株式の実質的な所有者が異なる株式のことをいいます。かつての商法では、株式会社の発起人が7人必要だったことから、創業時に名義だけ借りて発行した株式が名義株式として残ったままになっている会社もかなり存在します。このような会社は社歴が長いために、株価も高くなっていることも多く、事業承継に当たって、名義人が自分は実質的な所有者であると主張されると、やっかいな問題となります。また、先代とは知人でも、後継者とは面識がない名義人も多く、後継者が事業承継した後には何らつながりがなくなるので、リスク要因となります。したがって、事業承継に当たっては、名義株式は事前に処理しておくことが大切です。

Q40.事業承継で名義株式への対応は?

名義株式は、後継者が事業承継した後にトラブルにならないように、必ず先代経営者が健在なうちに処理しておくことが必要です。名義株式の処理とは、ひとことで言えば、名義株式の名義を実質上の株主に書き変えておくことです。そのためには、名義人から、自分は名義人に過ぎず、実質的な株主は先代社長であるという確認書を書面で作成してもらうことが必要です。もし書面が作成できないようであれば、配当を実質的な株主に支払って、配当の支払い調書を作成しておく、それを使って確定申告を行う、会社の株主名簿を実質株主に変更しておくなど、できる限り証拠を残しておくことが大切です。

Q41.事業承継と社員持ち株会との関係は?

社員持ち株会とは、社員に会社に対するロイヤリティを高めることと、銀行預金よりも高い配当を支払うことで、社員の財産形成に役立ててもらうことを目的に作られる会です。具体的には、オーナー社長が保有している自社株の一部を配当優先株として、社員に売却します。また、社員持ち株会規約で社員が死亡した場合や退職した場合の株式の取り扱い、すなわち買い取り先や売却金額などについて定めておけば、安定株主としての役割も果たすことになります。オーナー社長の株式を売却することで、オーナー社長は株式を現金化できるために、事業承継に当たって相続税が軽減されるというメリットが生じます。

Q42.事業承継に社員持ち株会を活用する方法は?

オーナー社長が持っている議決権のある株式を売却すると支配権に影響が出ますので、必ず議決権制限株式に転換しておきます。同時に配当優先権株式にしておくと魅力が出ます。この株式を社員に売却します。この時の売却価格は、配当還元方式となります。オーナーは売却益が生じれば、申告をして所得税と住民税を支払うことになります。同時に社員持ち株会を設立します。その際に必ず規約を作成しておきます。入退会の要件や退会のときの株式買い取り先や売却金額などを細かく定めておきます。ただし、社員持ち株会も結局は株式が分散するのでリスクがないとはいえません。オーナー企業では、株式を100%後継者に譲渡することが理想であることに変わりはありません。

Q43.事業承継で少数株主はどうすればよいですか?

事業承継に当たっては、株価を下げて相続する必要があります。そのため、少数株主といえども、株価が下がると損害を被ることになります。また、将来株価が高騰したときに、買い取りを迫られる可能性も秘めています。したがって、事業承継で株価対策に入る前に話し合いにより、少数株主の株式を買い取ることが望ましいです。事業承継では、可能な限り100%の株式を後継者に譲ることが理想なのです。

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