事業承継を実行するに際しての留意点

事業承継を実行するに際しての留意点

人事労務の引き継ぎを円滑に行う

事業承継では、会社という抽象的かつ名目的な承継も必要ですが、実際にはそこで働く従業員を承継することになります。したがって、新たな経営者と旧来の従業者の関係が良好にならなければ、事業承継は上手くいきません。それゆえ、人事労務の引き継ぎには、細心の注意を払う必要があります。特に、事業譲渡の場合には、新たな会社の従業員との融合を図ることが大切です。

取引先の引き継ぎを円滑に行う

経営者の交代は、取引先にも影響を与えます。特に先代の経営者の個人的な信頼関係で取引が成り立っていた取引先では、新たな 経営者と同様の取引をしてくれるとは限りません。したがって、先代の経営者に会長や相談役などの名目でしばらく残ってもらって、取引先との引き継ぎを円滑にすることも考慮します。この場合には、権限の二重構造にならないように注意します。

債権者に配慮する

営業譲渡の方法によっては、優良事業だけを新会社に移して、債務を負わないことになり、債権者の権利を侵害する恐れがあります。場合によっては、紛争や訴訟に発展する可能性もあります。株式譲渡の場合でも、特に金融機関は債権者として、経営者から担保や個人連帯保証を取っているので、経営者の交代に関与してくるのは当然です。事業承継を円滑に実施するためには、金融機関をはじめとした債権者に十分に配慮することが必要です。

会社資産と個人資産を明確に分離しておく

事業承継をする前に、経営者の個人資産と会社資産を明確に分離しておく必要があります。中小企業では、実際には個人が使用しているのに、会社名義になっているものがあったり、その逆に会社が個人から多大な借り入れを行っていたりすることがあります。このような個人資産と会社資産が混在しているものは、明確に分離しておきます。契約締結後に、売買価格に大きな影響を与えるような事態にならないように、ガラス張り経営にしておくことが必要です。

法律を遵守して準備を行う

事業承継においては、法律や契約が極めて重要な役割を果たします。株式譲渡契約などの事業承継に関する契約書の作成にあたっては、専門家に相談した上で、経営面、法務面、税務面のそれぞれを踏まえて、適切な契約書を作成することが大切です。さらに、事業承継に伴う個人資産の相続や、リスク回避のための遺言書の作成など、経営者は法律を遵守して、事業承継の準備を行うことが重要です。

財務・税務にも十分に注意を払う

事業承継には、株式譲渡など財産の移転が伴いますので、資金調達や節税対策には十分に注意を払うことが必要です。ただし、あまり節税ばかりに目を向けて、経営の承継がおろそかになっては元も子もないので、要注意です。また、事業を承継した経営者は、会社運営に資金が必要なので、財務面にも注意を払います。他者が株式譲渡を受ける場合には、個人で多額の資金を要するので、 融資を受ける必要も生じます。

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